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2013 06 09 私が選んだ30冊

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5月12日からはじまった,"ほんやずき:期間限定書店"も今日で最終日.

この企画は,群馬県前橋市敷島のフリッツアートセンターの小見純一さんによるもので,作家の人生に影響を与えた本をセレクトして,期間限定ショップで販売するというもの.昨年の第一回は,詩人の長田弘さんと絵本作家の荒井良二さんセレクトだった.今回の第ニ回は,グラフィックデザイナーのManiackers Designの佐藤さんと,私の選んだ30冊.

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限定書店がはじまってほぼ一ヶ月.
昨日フリッツに見に伺ったら,もうずいぶ売れていて無くなっている本もちらほら.
あの場所に漂っている緩い感じが,心地よい.

今思うとああ,この本入れておけば良かった!(たとえば,上村一夫の「同棲時代」とか,師匠の本とか)というのもあるけれど,今回は,今までの人生の転機になったものや,建築関係を中心に選んでいる.
下記が私が選んだ30冊とその解説.
どれも有名なものなので,ご興味のある方は是非フリッツで.




01. 「生物から見た世界」 Jakob Von Uexk¨ull(ヤーコプ・フォン ユクスキュル 原著),Georg Kriszat(ゲオルク クリサート 著),日高敏隆・羽田節子(訳) 岩波文庫
事務所のスタッフに勧められた本.事務所設立以来,自分がモヤモヤ考えていたことの答えが,この本の中にたくさんあった.同時期に五十嵐大介の魔女や海獣の子供を読んだので,その相乗効果もある.いろんなものが,同時に存在することの素晴らしさを,伝えたいと強く思った.


02. 「風の谷のナウシカ全7巻」 宮崎駿(著) 徳間書店
絵の表現方法,世界の捉え方,物語の進め方など,おそらくもっとも影響を受けている漫画で,それが自分の展覧会のときなどにはっきりと現れる.中学高校の頃にナウシカを読んだことで,その後の暮らしの中で興味が向かう方向が決まったように思う.ただジブリ映画で一番好きなのは,ナウシカではなく千と千尋だけれど.


03. 「新建築2011年3月」 新建築社
生物建築舎としての建築作品「天神山のアトリエ」を初めて掲載頂いた記念すべき号.この号が発売されて11日後,東日本大震災が起きた.震災前の時代の最後の新建築である.建築界の雰囲気もこのあと変わった.誌面のなかのアトリエは,まだ幼く,現在の姿との差を測るものさしでもある.この本は天神山ができた当時の時間の断面の記録だ.今後,天神山はどんな位置づけになってゆくだろう.


04. 「建築設計資料集成」 丸善
日頃もっともコンスタントに見ている書籍かもしれない.建築設計実務の基準線のような本であり,今までの寸法研究の膨大な蓄積.


05. 「センチメンタルな旅・冬の旅」 荒木経惟(著) 新潮社
会津に暮らしていた頃のボス,芳賀沼整の本棚で出会った一冊.人生と表現が一致した写真家の凄みが,芳賀沼の真正直な生き方と重なった.美しさとは覚悟ではないかと思った.雨の日に見たくなる.


06. 「海の向こうで戦争が始まる」 村上龍(著) 講談社
東京時代にあった破壊願望.四方八方から体を密着される満員電車で村上龍をよく読んだ.体躯に感じる現実の不快感に,活字の妄想が抗う.目の前の日常の不条理を爆弾で吹き飛ばし,ナイフで切り刻もう.この本を思うと,椎名林檎の勝訴ストリップが脳内に流れ,鼻を突く終電の嘔吐物の臭いを思い出す.


07. 「羊を巡る冒険」 村上春樹(著) 講談社
東京時代の現実逃避を示す一冊.通勤電車の狂気(私はそれまで東京暮らしをしたことが無く,満員電車に対する免疫無し)から逃げる手段としての村上春樹.その中でも,この物語の透明感が一番残っている.会社に内緒で銀座に引っ越し,6ヶ月の満員電車通勤を辞めたあとは,本を読まなくても大丈夫になった.代わりに浜離宮を散歩したりして,妄想は現実社会に繋がろうとし始める.ウイスキーを飲みながら,ちょろちょろ読み返したい本.


08. 「建築家なしの建築」 B・ルドフスキー(著),渡辺武信(訳) 鹿島出版会
大学の研究室で見つけた本.この本をきっかけとして,B・ルドフスキーにはまる.そのころ学んでいたアカデミックな建築は,建築の歴史のうちのほんの一握りに過ぎないと知る.人間と建築ののっぴきならない関係に興味を向けるきっかけとなった本.


09.「 建築20世紀 1,2」 鈴木博之,中川武,藤森照信,隈研吾(著) 新建築社
大学4年時,大学院試験の勉強の参考ために生協で購入.読み始めると建築の歴史が面白くなって,この本ばかり見るようになり,構造や環境といった建築の他の分野の勉強を全くやらなくなってしまうことになる,という罪作りな2冊.試験は何とか合格.


10. 「ビートルズ全詞集」 内田久美子(著,訳) シンコーミュージック
高校の頃,ビートルズに熱狂.新星堂という高崎の街の楽器店に通い詰め,展示品のピアノで,よく曲の練習をしていた.そこは書店でもあって,譜面や歌詞集も多く置いていた.ビートルズの歌詞の翻訳に拘り,誰々の翻訳はここが上手い,とか,表現があいまいだ,とか,曲ごとに自分の中でベスト翻訳を探す作業が続く.内田さんの訳は,当時一番好きだった.


11. 「ちゃいくろ」 高田恵以(著) BL出版
幼少時に触れた知育絵本.自分の原風景を思い出そうとするとき,ちゃいくろや,いわさきちひろの絵がふっと通り過ぎる.それらを思うと,暖かい陽射しのような心持ちが来て,気持ちが沈んでいるときも,一定時間逃避できる.幼い頃に見た,国内外の昔話や,朗読テープ,図鑑,百科事典,画集,保育園で貰ってくる冊子などの,楽しい形や色や物語は,わりとはっきりと脳に残っている.こういう本は花咲く野原で読みたい.


12. 「眼球譚」 Georges Bataille(ジョルジュ バタイユ 原著),生田耕作(訳) 河出書房新社
大学の文系図書館で出会った一冊.哲学書に興味を持ち色々漁っていたら,およそ哲学書らしくないのが出てきた.活字書籍がこれほど気持ちを逆なでするか…と衝撃を覚えた.衝動的なものや刹那的なものに対する耐性や好奇心を自覚できていなかった頃に出会い,この本によって暗いものへ向かう欲望が開かれる.東京時代へ繋がる接続線.この本の後ろでミスチルの深海が小さく流れている.ただ,読み進めていってもひたすら気味悪いので,結局最後まで読んではいない.


13. 「星の王子さま」 Antoine de Saint‐Exup´ery(サン=テグジュペリ 原著),内藤濯(訳) 岩波書店
中学のとき,この本を読んで,飛行機が落ちたシーンの絵を描きたくなって,水彩画にした.この本は挿絵が強烈なので,いったん忘れて自分の頭の中で世界を再構築するのに時間がかかったが,結局描き終わった世界は,鳥山明の世界に似たものになった.この頃の自分の空想世界は,ジブリや鳥山明や手塚治虫の世界観が支配的で,見聞きしたたくさんの物事がそれらのフィルターでいったん変換されてから体に入った.今ならもう少し客観的に読めそう.


14. 「実存・空間・建築」 ノルベルグ・シュルツ(著),加藤邦男(訳) 鹿島出版会
修士論文の参考書.ゲニウス・ロキで有名なシュルツの書籍.人はね,空間を五つの階層で感じているのだよ,と,人間の空間把握について当時整理することができた.この空間把握のためのエクセル表のような考え方を知って,時空間を横断しながら空想することは,まるで数学の座標の,何処かから何処かへ移動するだけのことのように素っ気なく思えた.今思えば,整理はしやすいが解釈の自由度を無くしていた.言葉で記述することの可能性と限界.アレグザンダーのパタンランゲージの方が,今は深く見える.


15. 「陰影礼賛」 谷崎潤一郎(著) 中央公論社
日本人であって良かったと思う本.谷崎潤一郎を読むといつもそう思う.最初に触れたのはいつだろう.確か磯崎新の中山邸のテキストに光の種類の記述があり,そこからこの本に導かれたように思う.口に含むときの羊羹を表現した文章がとても好き.布団の中で読むと良い.


16.「 Best of Navi talk1984-1992」 徳大寺有恒(著) 二玄社
学校に入学しても1年時は専門分野の授業も無いため,まだ建築に興味はもてず,美術部と野鳥の会の部活動に熱心で,建築本は一冊も持っていなかった.この頃触れていた本と言えば,自動車に関する雑誌や書籍ばかり.特に雑誌NAVIや間違いだらけの車選びの,徳大寺節が痛快で,古本屋でごっそり買い込んでは読み漁った.大好きなホンダビートや,ユーノスロードスターに対する批評に胸を熱くする.批評精神や,文章がエンターテイメントであるということを,まだ建築に触れる前,徳大寺さんの本から学んだ.「ぶ男に生まれて」もおすすめ.


17. 「フィールドガイド日本の野鳥」 高野伸二(著) 日本野鳥の会
大学生時分,野鳥の会に属し,様々な場所に探鳥にでかけた.山に登ったり,孤島に渡ったり,渓流を下ったり,ときには明け方の暗闇の中,鳴き声だけを聞きに行ったり.ラムサール条約登録の宮城県伊豆沼ではマガン調査,蔵王ではイヌワシの営巣調査など.そうやって鳥を探しながら,東北の自然を満喫していた.そんな探鳥会の最後に決まって行われるのが,通称「鳥合せ」.このとき,みんなでこのフィールドガイドを片手にメンバー各自が目撃した鳥を報告し合うのだ.日本に暮らす野鳥が網羅されている.


18. 「木のうた」 イエラ・マリ(著) ほるぷ出版
一本の大きな木のまわりで繰り広げられる生物の社会を描いた絵本.土の中まで表現してあるイラストが美しい.私の事務所で断面模型を作るとき,よく木の根っこを描くのは,この本も影響している.


19. 「はてしない物語」 Michael Ende(ミハエル エンデ 原著),上田真而子(訳),佐藤真理子(訳) 岩波書店
小学生5年生にして,はじめて最初から最後まで読んだ厚い本.当時,長い文章を読むのが苦手で,小学校の図書館でも〜の秘密シリーズなどの漫画的な本でないと,しっかりと読めなかったのだが,担任の先生にこれを借りたら,内容に引き込まれ読了することができた.厚い文字の本を読み切れた!という自信をもらった本.文字を読みながら絵や音や匂いを想像することを,ちゃんと意識した最初の本でもある.スフィンクスの場面はあとで絵にも描いた.このあとモモに繋がる.


20. 「きまぐれロボット」 星新一(著) 角川書店
中学高校の頃,ちょっと時間が空くとベッドや床に寝転がりながら読んでいた星新一のショートショートのうちの一冊.このころニュートンなどの科学雑誌が大好きで,物理学や天文学に興味を持っていたのだが,それらのリアルな科学世界(今思うとかならずしもそうでないけれど)とバランスをとるための,空想世界のような意味合いでも,その頃の自分に必要な本だった.


21. 「家」 安藤忠雄(著) 住まいの図書館出版局
大学の製図室でクラスメイトとよく回し読みしていた.建築家は分かりづらい文章を書くことが多いけれど,安藤さんの文章は読みやすく,直接伝わってくる.まさに安藤建築のように強い.建築について書くとき,こういう文章で表現したいと思った.本の中の図面はシンプルな表現.


22. 「金閣寺」 三島由紀夫(著) 新潮社 
会津時代,同僚から借りて読んだ本.建築を擬人化,神格化するに至る主人公が描かれる.このころは自分自身の問題として,建築(住宅)とは,服のように身体感覚を延長したものでは無いだろうか,と考えてもいた時期で,寒い会津の小屋で読んでいると,感覚だけでなく,心さえも建築の上に重ねてゆくこの物語に興奮できた.表現は論理的であり,理路整然と得体の知れぬ愛憎を描く不思議さ.


23. 「手塚治虫 火の鳥」 手塚治虫(著) 角川書店
小さな世界を突詰めてゆくと,やがてとても大きな世界に繋がっていて,全ては巡っているのだよという世界観が子供心に強烈だった.手塚の躍動的な漫画の描き方,大胆なデフォルメには,自分が描く仕事のドローイングさえも影響を受けている.物語からひとつを選ぶのはとても難しいが,鳳凰編と未来編で迷った挙げ句,未来編としておく.


24. 「きっちょむさん」 寺村輝夫(著),ヒサクニヒコ(イラスト) あかね書房
むかし子供部屋で弟とよく読んだ.今でもなぜかよく思い出すので,セレクトした.理由は分からない.夕焼けを見たりすると,挿絵のからすが頭の中を飛んだりする.


25. 「建築の解体」 磯崎新(著) 鹿島出版会
卒業論文のころ買う.メタボリズムを研究していた私は,丹下,菊竹,黒川,磯崎,槙といった,現代日本の巨匠の若かりし頃の言説を集めていて,その中でも,磯崎氏のこの本は異質で,のちの時代に対する予言書のようだった.当時,建築の概念を様々な方向に拡げてくれた本.


26. 「エルクロッキース OMA」 El Croquis
学生の頃よく眺めていた.90年代に学んだ設計志望の建築学生は,多かれ少なかれレム・クールハースの影響をうけたのではないか.建築のことが分からなくても,図面や絵を見ているだけで刺激的な図集.今見ると懐かしい.エルクロは他にもトム・メインやエンリック・ミラレスなど形態やプレゼンが特徴的な建築家ものを眺めるのが好きだった.


27. 「妹島和世読本」 妹島和世(著),二川幸夫(著) エーディーエー・エディタ・トーキョー
学生時代,よく眺めていた本.UCLAの短期留学に本書を同級生が持って行ったら,向こうでは発売されておらず,現地の学生たちから見せて欲しいとせがまれていた.今でも設計に迷ったときなど読み返す.当時仙台におり,東京のアトリエでのオープンデスク経験も無かった自分にとって,作品解説のみならず,妹島さん西沢さんのスタッフとの接し方や,ものごとの決定方法などについても,発見的な本だった.


28. 「こころ」 夏目漱石(著) 新潮文庫
高校のときの教科書に,抜粋が掲載されていて,全文が読みたくなり買う.のちに,幾つかの夏目作品へ飛び火.追いつめられたときに見せる人の本性は怖いと思った.そして,その人間らしさを肯定したい気持ちと否定したい気持ちの葛藤が当時あった.言葉は人を傷つける.そうすれば血が流れる.のちに自分の置かれた状況に置き換え(具体的なシチュエーションは違うけど),この物語のことを考えながら決断したりした.


29. 「生きられた家」 多木浩二(著) 岩波書店
今一番読みたい本.きちんと,通しで読んだことが無い.建築家仲間から,まだ読んだことないのか,と言われそうである.私自身ここで買おうと思っている.


30. 「銀河鉄道の夜」 宮沢賢治(著) 新潮社
大好きな宮沢賢治.中学生のときに読み,空飛ぶ汽車を絵にしたことも.宮沢賢治の文中に擬音語が出てくると,真剣に,どんな音だろうとか,どんな動きだろうとか,いろいろ思いを巡らせたりした.銀河鉄道の夜は開いた本の上に,空想で次々に風景を描き進むような読み方となるので,夜の暗がりの中で読むのが一番向いていると思う.また,川の土手などで,雨ニモマケズを読むと今でも変わらず励まされる.

以上.
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